音楽とグラフィック
会期: 2021.6.18(金)〜 2021.7.25(日)
会場: OFS gallery (OUR FAVOURITE SHOP内)
音楽とグラフィック展示詳細
〈参加作家〉 @Instagramアカウント
大原大次郎 @daijiro_ohara
加瀬透 @kasetoru
汐田瀬里菜 @shiotaserina
竹田美織 @miori_tkd
矢入幸一 @koichi_yairi
矢後直規 @yagonaonori
日頃、音楽に親しむグラフィックデザイナー6名がSpotify (音楽ストリーミングサービス)で自分のプレイリストを作成し、アイコンとなるグラフィックを制作。それを元にして音楽とデザインのイマジネーションをヴィジュアルやツールに落とし込み自由に表現する企画『音楽とグラフィック』。こちらの展示のアーカイブレポートをお届けします。
ヴィジュアルは“目”で、プレイリストは“耳”でお楽しみいただけるユニークな今回の企画。
展示では、ジャケットを鑑賞しながら、その場でスマホからプレイリストを聴くことができ、各々の世界観をよりお楽しみいただける内容となりました。 どんな音楽を選び、どのようなデザインのジャケットになっていったか。各作家の展示の様子をそれぞれ見ていきましょう。 大原大次郎 セレクトテーマは「少年くそマガジン CLASSICS “100% SAMPLING”」。 中高生の頃、数人の同級生にむけ発行していた手づくり新聞、「少年くそマガジン」。買ったレコードを勝手にレビューする内容。毎号付録でカセットコンピも作成していたら、次第に同級生たちも聴いた感想を書き連ねるように。高校卒業まで続いた「くそマガ」のカセットから、厳選したDIY音楽でプレイリストを作成してくださいました。
展示されているFAXは当時実際に使用していたモデルを、今回のために中古で買い直したもの。空間のインスタレーションやレコードジャケットはこのハンドコピー機で印刷されています。アナログな手法で作られたZINEは、学生の頃に作った「卒業文集」を思い出させます。大原さんと同世代の方にはきっと懐かしさを感じて頂けたのではないでしょうか。若い世代の方には昔のFAXやコピー機のアナログな質感から、いまのZINEブームにもつながっているような感覚を得て頂けたかと思います。
加瀬透 セレクトテーマは「Memories of January 2, 2021」2021年1月2日の思い出。 (断片的なイメージ:甥の赤ちゃん、車の窓からの風景、暖房、鏡像段階以前、アンビエント、ヒーリング…)です。
祖母に会うために家族で出掛けた車窓から見えた景色の数々。一緒に行った生まれて間もない赤ちゃん(甥っ子)には、どのように世界が見えているのか、その視点に思いを巡らせて生まれたジャケットデザインの数々です。視点をもとに、音楽も赤ちゃんが捉える抽象的でもあり、広い世界を感じるようなセレクトになっています。
汐田瀬里菜 セレクトテーマは「DOORWAY」。 ‘doorway’とは戸口、出入り口という意味で、汐田さんにとって新しい発見だったり入口につながったような曲を集めたプレイリストです。
感覚的にペインティングをしていくうちに、偶然できた鮮やかなグラデーション。
汐田さんの作品には、プレイリストの各曲に合わせた色とりどりのドアが、立体的なプリントであらわれています。音楽を聴きながらそれぞれの曲に合わせてきっと、たくさんのイメージが膨らんでいった様子がジャケットから伝わります。
竹田美織 セレクトテーマは「Chamber Music For Greenery」。
“緑のための室内楽”。Chamber music(室内楽)は16世紀のイタリアを発端とする管弦楽等を指しますが、このプレイリストでは広義に捉え、外出のままならない時代、室内で植物とともに聴く音楽をセレクトしていただきました。
特注で作られた“透明”の版は雫が水面に落ちたときにできる“みなも”のようで、植物のグラフィックに馴染むようデザインされています。時折、窓から注ぐ光に反射され、ノスタルジックな気持ちにさせてくれます。上から降り注ぐような「水」の音楽、根から吸い上げる「栄養」の音楽。植物の緑に、人の耳に、優しい音の粒。雨音を聴きながら、プレイリストを再生するのもオススメです。
矢入 幸一
セレクトテーマは「SWITCH」。 デザイナーとしてはもちろん、アート作品も制作し精力的に活動されている矢入さん。 ご自身がデザインとアートを切り替えるときに聴く曲を選んでくださっています。
本展のフライヤーのキービジュアルも矢入さんのデザイン。オバケは音楽を聞いている矢入さんご自身で、ポップなお花は音楽を聞いてる最中の頭の中をイメージされているそうです。ジャケットにはオバケが見え隠れするユニークな仕組みもあり、ポップなデザインとセレクトされた音楽も相まって、楽しげな世界観が伝わってきます。
矢後直規 セレクトテーマは「冥冥之志」。
「自分の世界を表現することが恥ずかしいと思ってしまうクリエイターたちに聴いてほしい、恥ずかしげもなく自分たちの世界観を全開にしている楽曲たちです。このくらいやり切ってしまえば何も恥ずかしくないという勇気をもらいながら、今日も何かを造りたいですね」と矢後さんはおっしゃっていました。
レコードジャケットは「お葬式」をモチーフにしてデザインされています。
コンテで描かれたその可憐な彼岸花は、私たちに生命の力強さや尊さを訴えかけているかのよう。十字架のように開かれた仕様のレコードジャケット、彼岸花一色で飾られた華やかな展示台、その佇まいは祭壇を連想させます。
会期中には、『音楽とグラフィック』展の参加デザイナー4名(加瀬 透/汐田 瀬里菜/矢入 幸一/矢後 直規)によるインスタライブを開催しました。
従来のジャケットやグッズのデザインだけでなく、MV や動画配信など、音楽とビジュアルイメージが切り離せない関係となっている昨今。日頃音楽に親しむデザイナーが「音楽とデザイン」「聴き手に繋げるビジュアルコミュニケーション」などについて、それぞれの捉え方を伺える貴重なトークイベントとなりました。
デザイナー自らが語る、貴重なインスタライブのアーカイブ動画は以下よりご覧いただけます。 『音楽とグラフィック』展インスタライブ
今回制作されたデザインのオリジナルグッズもオンラインショップでご購入いただけます。 実際にレコードを収納できるサイズのトートバッグや円形・四角形の缶バッジを販売中です。
オンラインショップはこちらからご覧ください。
※在庫がなくなり次第販売終了となります。
また、本展では企画に合わせて、幅広いジャンルのビンテージのレコードを並べました。2021年5月に田園調布にオープンした、珈琲とレコードと観葉植物の店、STILLPARKさんにご協力いただき、約80枚ものレコードを入荷。店主の山崎さんが厳選したレコード取り揃え、まるでレコードショップのように、展示とともに音楽を楽しむ空間となりました。
<STILLPARK> @stillpark_coffee
STILLPARKでは、珈琲を飲みながら、それぞれの暮らしに寄り添う植物とレコードをゆっくり選んでいただくことができます。レコードは幅広いジャンルから室内で聴いて心地よい音楽をセレクト。植物も室内環境で育てやすいものを中心に取り揃えていらっしゃいます。店内のカウンター席と前庭に面したテラス席で音楽と珈琲を楽しむ時間も素敵ですね。お近くにお出かけの際は、是非、足を運んでみてください。
各デザイナーのプレイリストは現在もOFS Spotify アカウントにてご試聴いただけます。 目と耳で、それぞれのデザイナーの世界観をぜひお楽しみください。
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