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アーカイブレポート|『太田莉菜の不在』

2022年3月4日(金) ~ 3月27日(日)

会期:2022年3月4日(金) ~ 3月27日(日)

会場:OFS gallery (OUR FAVOURITE SHOP 内)

太田莉菜の不在〔past〕

 

 

2022年3月、OFS galleryで、モデル/女優の太田莉菜さんと、アートディレクター・矢後直規さんのコラボレーションによる企画展「太田莉菜の不在」が開催されました。この企画展は「線になりたい」という太田莉菜さんの願望からスタートしたものでした。

 

 

「太田莉菜」は、果たしてこの世に何人存在するのだろう。

 

私自身、心の中の「太田莉菜」。

母親である「太田莉菜」。

表現者としての「太田莉菜」。(中略)

 

名前と姿形がいつからか独り歩きして、

何人もの「太田莉菜」がこの世には存在している。(中略)

 

本当の「太田莉菜」はどこにいるのだろう?

 

 

モデルや女優として活躍する太田さん。

映像や写真となって多くの人に見られるお仕事をしていますが、あるとき、そこにあるのは誰かにとっての太田莉菜のイメージで、本当の「太田莉菜」の輪郭をたどったもの…見る人によってイメージはくるくる変わり、たくさんの「太田莉菜」が存在しているような感覚を覚えたそうです。

 

そんな風に感じていた頃に、矢後直規さんと今回の企画のお話になり、

「写真や映像じゃなくて、線になりたい」

「輪郭やイメージ、何かの断片を頼りに”太田莉菜”を表現する企画ができないかな?」

とアイデアを出されたそうです。

 

このアイデアを聞いた矢後さんは「いいね、面白い!」と大賛成。

しかし心中では「難しそう…」とどきどきしていたそうです。

 

が、約5ヵ月間の準備期間を経て、矢後さんの視点を通じた作品 が完成!今回の企画展が実現しました。

 

 

今回の制作の流れとしては、まず太田さんがプライベートで撮影した数十点の写真の中から、特に“太田莉菜らしい”と感じるモチーフをセレクト。それをB4サイズの小さなキャンバスに描き出しました。このプロジェクトが始まってからの矢後さんは「見た目以外の太田らしさとは何か」を模索していく日々だったそうです。

 

 

次にそれらを合成することでB1~B3サイズの中・大型作品に仕上げました。

アクリルの額装がまた素敵です。

 

 

ほかにも「肉体が写らない=透明」という発想から生まれた、ステンドグラスをイメージした立体作品も。

 

 

2枚目の写真の左に映っているドアは、将来、矢後家のリビングのドアになるそうです。

 

 

矢後さんは、ラフォーレ原宿の広告制作をはじめ、RAD WIMPS・THE YELLOW MONKEY・矢野顕子さんなど著名なアーティストのCDジャケットや、写真家のブックデザイン、ブランディングなど、多方面で活躍中のアートディレクター。デザインや撮影の前には、とてもこまやかにラフ画を描かれるそうで、今回展示した絵もとても細やか。1枚1枚、細い輪郭線で書き込み、蛍光マーカーで丁寧に彩色されていました。

 

絵のモチーフは、太田さんの娘のバースデーパーティーやIKEAのサメなどキュートなものもあれば、銀色のケトルに映り込んだ緑あふれるお庭など日々の暮らしをイメージさせてくれるものも。どれも太田さんの姿は「不在」なのに、その存在や、そこで過ごした時間を感じさせてくれるものばかりでした。

 

中には古典絵画のオマージュを含む作品も。

たとえばこれは、エゴン・シーレのちょっと退廃的でアンニュイな空気感をイメージして描いたそう。

 

 

3/12(土)・3/18(日)には矢後さんと太田さんによるトークイベントも。

 

作品制作の裏話を中心に、普段あまり語られない太田さんのプライベートな話も披露されました。

 

 

作品制作の裏話として、1枚のワンピースのエピソードが紹介されました。

(上の写真で、太田さんのすぐ後ろに写っているものです)

 

これは太田さんが海外で出会ったワンピースなのですが、サイズが細すぎるあまり売物でなくディスプレイ用として飾ってあったそうです。それを一目で気に入った太田さんが試着してみるとなんとぴったり!即購入し、それ以来破れても汚れてもリメイクして大事に持ち続けている特別な1枚なのだそうです。

 

そのエピソードを知った矢後さん、今回の展示作品にもしっかりと反映させました。

ワンピースのすぐ横の作品がそうで、太田さんの横顔をワンピースの柄で表現しています。

 

 

会場演出にも、テーマにあわせたこだわりが。

 

太田さんのプライベート空間をイメージしてお洋服をかけた椅子や愛読書などを配置。

壁には、展覧会が始まる前に太田さんが会場を訪れた時の映像が映し出され、会場にはコツコツと太田さんの歩く靴音が響きます。

 

本人”不在”なのに、太田さんの存在をとても色濃く感じられる演出でした。

 

 

会期中に印象的だったのは、訪れた方が、1枚1枚の作品をじっくりご覧になる様子。作品からいろんな想像を巡らせて、お連れ様同士でお互いの感じたイメージや太田さん像を話される姿をたくさん見かけました。

 

 

週末には矢後さんご本人も在廊。
ご来場くださった方々との交流の時間をたっぷりと取ってくださいました。

 

今回の「太田莉菜の不在」展の作品を収録した作品集も、絶賛製作中だそうです。発売日などは後日発表。

気になる方は矢後さんのSNSをフォロー&チェックしてみてください。

 

 

矢後直規さんInstagram  @yagonaonori

OFS Gallery