ファッション以外にも、インテリアや食器のプロダクトを手掛けたり、大規模な展示の開催や、食堂のオープンなど、その活動は多岐に渡る皆川さん。 皆川さんのベクトルは外へ外へと向いているのに、活動が広がるほどに、私たちが目にするその世界観は、皆川さんの内側を覗かせてもらっているような吸引力がある。 そんな皆川さんの愛用品はこちらの3品。 ・「蕪木」の珈琲とネルドリッパー ・野田琺瑯 蒸気調理鍋「MIMOZA」 ご紹介している商品はOFS ONLINE SHOPでもご購入頂けます
「蕪木」は蔵前にあり、店主・蕪木祐介さんが長年の思いを実現し、自身の名を冠して営む喫茶店。 そこで提供される、手のかけられた珈琲とチョコレート。 そして何より、たった1杯の珈琲から、店主が思いを持ってやっているのが感じられる、とその空間を尊む皆川さん。 蕪木さんとスタッフにより、ほぼセルフビルドで作られた2階建ての空間からは、その場所を作りあげるには、自分たちの考えが手と共に必要だと感じさせる何かがある、という。 蕪木さんがそうして考え、気を配って作られた空間では、 外にいながらにして、自分の事を思う貴重な時間を持つことができる。 皆川さんも、一人内側をみつめる時間を大切に過ごして、自分の中での気付きが増えた結果、その一部を現実の世界にもやってみたいという思いが生まれ、 外に活動を広げる事ができるのだそう。 美しい形や物を作りたいというより、蕪木さんの珈琲と同じように、 自分たちが作った物事が、どういう時間に繋がるのかを考えることが、とても大事。という皆川さん。 こうした時間によって積み重なる質量の高まりが、皆川さんの作り出すものに惹きつけられる要因だろうと思う。 料理家・辰巳芳子さんが考案された、琺瑯の蒸気調理鍋。 辰巳さんが病床で食べる力を失ったお父様に、美味しく栄養のとれるものを作ってあげたいと生み出した「しいたけスープ」や、蒸し料理に適した鍋を、と考えて作られた「MIMOZA」。(しいたけスープのレシピ付きです。) 煮ものや汁ものは、1mmと厚手の鋼板で炊くことで、味はよく、美しく仕上がり、蒸し料理については、金気をおびない蒸気が、ものの質をゆがめず、穏やかに食材の持ち味を引き出すのだそう。 料理を「体の中に入って消化される、また一つ特殊なクリエイション」と例える皆川さん。 「洋服であれば、半年、1年のタームでものをつくるが、食事は一瞬。 それなのに、かえって物より長くその人の中に留まる要素もあり、命に関わるという直接的なところも食の独特さ」としつつ、料理が提供されるまでのプロセスはファッションと良く似ていると仰る。 材料を選んで、切り方を考え、味付けし、どうやって見せたらお客様が美味しくいただけるか、盛り付けやお皿を考える。 果物一つを切り分けるにも、ついつい等分に切ってしまいがちだけれど、食べている人の人数や、女の人が何人で、男の人が何人だな?お腹の具合は? 今どれだけ切ったらこの人にとって美味しいサイズかな?という事を気にしながら微妙に櫛形の大きさを変えてみる。 服作りにおいても、お客様の袖丈はどうしようかな?縫い代はどのくらいで、糸は何mmの太さを使うのが適当で、ステッチは何本? そうやって着る人の事を考えて気を配る部分に、大きく通じるところがあるのだそう。
洋服を通して、100年つづくその先まで、着る人のなかに特別な時間と幸福感をつくりたいと、常に受け取り手を想像する皆川さん。 同じように、受け取る誰かの事を考えつくれらた辰巳さんのお鍋や、蕪木さんのしつらえる空間は、皆川さんのクリエイションと呼応し、心地よく皆川さんに馴染んでいるのかもしれない。 皆川明 デザイナー。1995年に設立した自身のブランド「minä perhonen」(2003年まではminä)では、手作業で描かれた図案から作るオリジナルファブリックによるファッション、インテリア等で注目を集める。ストーリー性のあるデザインと、産地ごとの作り手の個性を活かした、長く愛用されるものづくりを目指す姿勢はブランド設立時から一貫している。個人の活動として、国内外の様々なブランドとデザインを通じての協業を精力的に続ける他、新聞や書籍への挿画、宿のディレクションなど活動は多岐にわたる。